Azure Backupの設定からVMのバックアップ、リストアまでの手順

2021-04-23Azure,Bcakup(Recovery Services),Virtual Machine

Azure Backupを使用した仮想マシンのシステムバックアップからリストアまでの手順の説明です。
Azure BackupのRecovery Servicesコンテナーのリソース作成や初期設定、バックアップポリシーの作成、仮想マシンのバックアップ構成、リストア手順の確認について記載しています。
リストア後の仮想マシンの状態についても確認しています。

仮想マシンとしてリストアする場合は新規作成する方法と既存を置換する方法の2パターンあります。
本記事では新規作成のリストア手順を記載しています。
既存を置換するリストア手順についてはこちらに纏めています。

※2023年3月に画面等を更新しました。一部Azure Portalが日本語化されていない部分があります。

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Azure Backupを利用した仮想マシンのリストア方法は4パターン

Azure BackupやAzure Recovery Servicesコンテナーとは?

Azure BackupはAzure上で提供されるマネージドなバックアップサービスです。
Azure Backupサービスを利用する際のバックアップデータを格納するための保管場所を提供するリソースがAzure Recovery Servicesコンテナーとなります。
Azure上やオンプレ上に作成された仮想マシンなどのシステムバックアップに利用されます。
Azure FilesやSQL Serverのバックアップなどにも利用できます。

Azure バックアップ(公式サイト)
Azure Recovery Services コンテナー

リージョンをまたがるリストアもできます。
今回は仮想マシンについてまとめています。

※プレビューですがAzure Database for PostgreSQL フレキシブル サーバーのバックアップにも利用出来ます。

仮想マシンのリストア方法は4つに分類される

仮想マシンのリストアについては4種類あります。
仮想マシン自体をリストアが2パターン、マネージドディスク(Managed Disks)をリストア、ファイルをリストアするパターンがそれぞれ1パターンになります。

仮想マシンのリストアパターン

【MS社公式サイト記載の図】

仮想マシン(Azure VM)のリストアパターン

仮想マシンのリストア
(新規作成)

バックアップから新規仮想マシンを作成するリストア方式です。
リストア後は新規仮想マシンとリストア対象の仮想マシン(既存Azure VM)と2つの仮想マシンが存在します。
新規作成された仮想マシンには新規にディスク、ネットワークインターフェース、IPが払い出しされます。
既存の仮想マシンに変化ありません。

仮想マシンのリストア
(既存を置換)

バックアップから既存仮想マシン(リストア対象)のマネージドディスクを置換するリストア方式です。
リストア後はリストア後の仮想マシンのみがリソースとして存在します。
仮想マシンのマネージドディスクのみがリストア後のディスクと置き換わります。

ディスクのリストア

バックアップからマネージドディスクを作成するリストア方式です。
リストア後のディスクから仮想マシンを新規作成できます。

※VMのリストア(新規作成)では可用性セットを選択する事が出来ません。一旦ディスクにリストアした後にVM作成が必要になります。

ファイルのリストア

バックアップからマネージドディスク作成と仮想マシンマウント用のスクリプトを生成します。
マネージドディスクを仮想マシンからマウント、ファイルコピーを行い復旧します。

※作成されたディスクの有効期限は12時間です。(Azure Portal上でリストアしたマネージドディスク自体を直接見る事は出来ません。)

仮想マシン自体をリストアする方法は2パターン

仮想マシン自体をリストアする方法は2パターンあります。
リストア後の仮想マシンの状態はリストア方法によって異なります。

リストアパターン VM数 リストア後のイメージ 概要
新規に仮想マシンを作成 2台
  • 新規VM(新ホスト名)
    • リストアしたディスク
  • 既存VM(既存のホスト名)
    • 既存ディスク
新規VM構築と同様に新しいIPのVMが生成されます。
既存の仮想マシンを置換 1台
  • 既存VM(既存ホスト名)
    • リストアしたディスク

※既存VMに関連付けされていたディスクは削除されません。(VMとの関連付けは無し) 

IP等の設定は変わりません。マネージドディスクだけが置き換わります。

※VM数はリストア後の仮想マシンの数です。

ファイルでのリストア手順についてはこちらに纏めています。

ディスクでのリストア手順についてはこちらに纏めています。

Azure Recovery Servicesコンテナー作成から初期設定

設定内容

今回作成したRecovery Servicesコンテナーの設定です。

  • Recovery Servicesコンテナー(リソース作成時)
区分 項目 設定値
インスタンスの詳細 資格情報コンテナー名 test-postgresql-flexible-server
リージョン East US2
Networking Connectivity method Allow public access from all networks
  • Recovery Servicesコンテナー(リソース作成後)
区分 項目 設定値
バックアップ構成 ストレージ レプリケーションの種類 ローカル冗長
セキュリティ設定 Enable soft delete for cloud workloads チェックを外す
Enable soft delete and security settings for hybrid workloads チェックを外す

※Enable soft delete for cloud workloadsはAzure上のリソースに対する論理削除設定です。
※Enable soft delete and security settings for hybrid workloadsはオンプレのリソース等に対する論理削除設定です。

  • バックアップポリシー
区分 項目 設定値
Standard 保護 ポリシー名 daily-backup-7day-policy
バックアップ スケジュール

頻度:毎日
時間:4時00分
タイムゾーン:日本時間(UTC+09:00)

インスタント リストア 3日
保持期間の範囲 毎日のバックアップ ポイントの保有期間 7日

リソース作成

仮想マシンのバックアップ先となるRecovery Servicesコンテナーを作成します。

リソース作成手順

Recovery Services コンテナーで作成を選択します。

Recovery Servicesコンテナー作成画面

リソースグループ、コンテナー名、リージョンを設定します。
Networkingを選択します。

Recovery Servicesコンテナー作成画面

Networkingの設定です。
Deny Public accessを選択するとプライベートエンドポイントの設定が出来ます。
今回はAllow public accessで進めます。

Azure Backup のプライベート エンドポイントの作成と使用 (V2 エクスペリエンス)

Recovery Servicesコンテナー作成画面

確認画面が表示されます。
内容を確認して作成を選択します。

Recovery Servicesコンテナーの作成手順はこれで完了です。

Recovery Servicesコンテナー作成画面

バックアップ冗長設定

Azure Recovery Servicesコンテナーの冗長性はローカル冗長(LRS)、ゾーン冗長(ZRS)、geo冗長(GRS)の3種類から選択できます。
リージョンをまたがるバックアップやリストアする場合はgeo冗長(GRS)を選択します。
冗長性の選択により課金額が異なります。

Azure Backup の価格

リソース作成直後にはRecovery Servicesコンテナーの冗長設定がGeo冗長となっています。
今回は検証用なのでローカル冗長に変更します。

冗長設定の変更はバックアップ設定前に実施する必要があります。
1台でも仮想マシンをバックアップ設定すると冗長設定は変更できません。
利用用途に合わせて最初に設定します。

冗長設定手順

Recovery Services コンテナーの設定にあるプロパティを選択します。バックアップ構成の更新を選択します。

ストレージレプリケーションの種類とリージョンをまたがる復元の有効無効が選択できます。

Recovery Servicesコンテナーバックアップ構成画面
ストレージレプリケーションの種類でローカル冗長を選択します。
設定を保存します。
Recovery Servicesコンテナーバックアップ構成画面

論理削除設定

Recovery Servicesコンテナーの初期設定では論理削除は有効になっています。
検証なので論理削除を無効にしています。
論理削除有効の場合は仮想マシンのバックアップ削除してもRecovery Services コンテナー自体を削除出来ません。
論理削除の対象期間である14日間はRecovery Servicesコンテナーのリソース自体を削除出来ません。

※利用用途に合わせて論理削除の無効化は行うようにします。

論理削除設定手順
Recovery Services コンテナーの設定にあるプロパティを選択します。セキュリティ設定の更新を選択します。 Recovery Servicesコンテナー論理削除設定画面

Enable soft delete for cloud workloadsとEnable soft delete and security settings for hybrid workloadsはのチェックを外します。

※Enable soft delete for cloud workloadsが仮想マシンの論理削除に該当します。

Azure Backup での強化された論理的な削除の構成と管理 (プレビュー)

Recovery Servicesコンテナー論理削除設定画面

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バックアップポリシー作成から初回バックアップ取得まで

バックアップポリシー作成

Recovery Servicesコンテナーのバックアップスケジュールはバックアップポリシーで設定します。
バックアップ時間と併せてバックアップ保持期間の設定を行います。
Standardのバックアップポリシーを選択するとトラステッド起動の仮想マシンがバックアップ出来ないなどの制限があります。

拡張ポリシーを使用して Azure VM をバックアップする

バックアップポリシー作成手順
バックアップポリシーで追加を選択します。 Recovery Servicesコンテナーバックアップポリシー設定画面
ポリシーはバックアップ対象ごとの設定です。
Azure仮想マシンを選択します。
Recovery Servicesコンテナーバックアップポリシー設定画面

ポリシーの作成画面です。
ポリシーのサブタイプはStandard(標準)とEnhanced(拡張)があります。
Enhanced(拡張)を使用すると1日複数回のバックアップ設定が出来ます。

※今回はバックアップ、リストア手順確認が目的なのでStandardを選択しています。

Recovery Servicesコンテナーバックアップポリシー設定画面

バックアップスケジュールは頻度、時間、タイムゾーンの設定とインスタントリストア(スナップショット)保有期間の設定で構成されます。

保有期間の範囲はバックアップポイントの保有期間になります。
間引いてバックアップデータ保有する事が出来ます。

※インスタントリストア(スナップショット)を使うと高速にリストアする事が出来ます。

Recovery Servicesコンテナーバックアップポリシー設定画面

バックアップスケジュールは毎週の場合は曜日を指定出来ます。

※毎週の場合はインスタントリストアの保有期間は5日固定です。

Recovery Servicesコンテナーバックアップスケジュール設定画面

バックアップポイントの保有期間にチェックを入れると設定が出来ます。

※今回は設定していません。

Recovery Servicesコンテナーバックアップスケジュール設定画面
日本時間午前4時にバックアップを取得します。
バックアップデータを7日間保有します。
バックアップは毎日実行します。
Recovery Servicesコンテナーバックアップスケジュール設定画面

ポリシーのサブタイプでEnhanced(拡張)を選択

ポリシーのサブタイプでEnhanced(拡張)を選択した場合には1日に複数回のバックアップを取得できます。
スケジュールの頻度の項目に毎時間が追加されます。

拡張ポリシーを使用して Azure VM をバックアップする

Enhanced(拡張)を選択した場合
スケジュールの頻度に毎時間が追加されます。
スケジュールは時間間隔の選択になります。
4時間、6時間、8時間、12時間の4つから間隔を選択します。
Recovery Servicesコンテナーバックアップスケジュール設定画面

ポリシーで階層化を有効にする

階層化を有効にするとアーカイブ層が利用出来ます。
アーカイブ層は毎月、毎年のバックアップポイントで利用できます。

Azure Backup の Archive レベルの概要

アーカイブ層を利用する事で課金を抑えられます。

Azure Backup の価格

階層化を利用する為には毎月のバックアップポイントか毎年のバックアップポイントを有効にする必要があります。
バックアップポイントを有効化するとアーカイブ層の設定が表示されます。

階層化を有効にする
アーカイブレベルへの移動は”推奨される復旧ポイント”もしくは”対象復旧ポイント”が選択できます。
対象復旧ポイントを選択すると何か月後からアーカイブへ移動するか指定出来ます。

Recovery Servicesコンテナーバックアップスケジュール設定画面

仮想マシンのバックアップを構成

バックアップポリシーとバックアップ対象の仮想マシンを選択します。
今回はRecovery Servicesコンテナーから設定を行っています。
仮想マシンからの設定はこちら

設定手順

Recovery Services コンテナーのバックアップからバックアップ設定できます。
バックアップのリソースメニューからも設定できます。

バックアップの構成が表示されます。
Azureと仮想マシンを選択します。
バックアップを選択して構成を開始します。

仮想マシン(Azure VM)のバックアップ構成
仮想マシン(Azure VM)のバックアップ構成

バックアップの構成が表示されます。

  • 設定内容
    • バックアップポリシー 
      • バックアップスケジュールやバックアップの保持期間を設定
    • 仮想マシン
      • バックアップ対象を選択

事前に作成したバックアップポリシーを選択します。
仮想マシンを追加を選択します。

※バックアップポリシーの新規作成も出来ます。

仮想マシン(Azure VM)のバックアップ構成

バックアップ対象の仮想マシンをリストから選択します。

※他のRecovery Servicesコンテナーで設定されている仮想マシンは選択できません。

仮想マシン(Azure VM)のバックアップ構成

バックアップの有効化を選択します。

仮想マシン(Azure VM)のバックアップ構成
有効化が完了するとバックアップ項目に設定した仮想マシンが表示されます。 仮想マシン(Azure VM)のバックアップ構成

初回バックアップの実行

バックアップを有効化しただけでは初回バックアップは実行されません。
初回バックアップを手動実行する必要があります。

※スケジュール実行時に初回バックアップが取得されます。

初回バックアップ取得手順
バックアップアイテムのリソースメニューを表示します。
バックアップの管理の種類が表示されますので、Azure Virtual Machineを選択します。
仮想マシン(Azure VM)のバックアップ構成

バックアップ対象の仮想マシン一覧が表示されます。
初回バックアップが取得されていない旨のメッセージが表示されています。

対象の仮想マシンで今すぐバックアップを選択します。

仮想マシン(Azure VM)の初回バックアップ

バックアップの保持期間が表示されます。
今回は7日後(3月5日に設定)に設定します。

※バックアップポリシーとは別で完全に独立した保有期間です。
※デフォルトは31日後になります。

仮想マシン(Azure VM)の初回バックアップ

バックアップ状況はRecovery Services コンテナーのバックアップジョブで確認出来ます。

バックアップジョブ実行状況

新規仮想マシンとしてリストア

新規仮想マシンとしてリストアします。
test-vm-01をrestore-vm-01としてリストアします。

リストア対象の仮想マシンと復元ポイントを選択

リストア対象の仮想マシンと復元ポイントを選択します。

リストア対象と復元ポイントの指定手順
バックアップアイテムのリソースメニューを表示します。
バックアップの管理の種類からAzure Virtual Machineを選択します。
仮想マシン(Azure VM)のリストア
バックアップされている仮想マシン一覧が表示されます。
リストア対象の仮想マシンを選択します。
仮想マシン(Azure VM)のリストア

復元ポイントを指定して復元を開始します。
直近の状態に戻す場合は一番新しい復元ポイントを選択します。

仮想マシン(Azure VM)のリストア

新規仮想マシンとしてリストア

新規仮想マシンとしてリストアします。
バックアップ対象の仮想マシンとは別にリソースが作成されます。

※バックアップデータを利用して新規仮想マシンを作成すると考えた方が理解しやすい気がします。

新しい仮想マシンのリストア手順

仮想マシンの復元画面が表示されます。

※英語表示(2023年3月現在)になっています。

仮想マシン(Azure VM)のリストア(新規作成)
Restore configuration(構成の復元)はCreate new(新規作成)とReplace existing(既存を置換)から選択します。
新規仮想マシンとリストアする場合はCreate new(新規作成)を選択します。
仮想マシン(Azure VM)のリストア(新規作成)
Restore Type(復元の種類)でCreate new virtual machine(新しい仮想マシン)を選択します。
ディスクを復元する場合はRestore disksを選択します。
仮想マシン(Azure VM)のリストア(新規作成)

新規仮想マシン作成時と同じく、リストア先の仮想ネットワークやサブネット等を指定する必要があります。
Staging Location(ステージングの場所)でストレージアカウントを指定します。このストレージアカウントはテンポラリーのファイル置き場になります。

復元をクリックするとリストアが開始されます。

仮想マシン(Azure VM)のリストア(新規作成)

リストア後の仮想マシンを確認

リストアされた仮想マシンの設定状態を確認します。

リストア後の仮想マシンの設定はリストア元の設定のままとなっています。
OSのホスト名変更、拡張機能、IPの設定、Azure Monitor関連の設定等も新規仮想マシン作成時と同様に考慮する必要があります。
バックアップ設定も新規に必要になります。

リストア後の確認

バックアップジョブのリソースメニューからリストア状況が確認できます。
正常にリストア出来た場合は状態が完了となります。

バックアップジョブの実行状況

リストア後の仮想マシン(restore-vm-01)を選択します。
コンピューター名がリストア元の仮想マシン名(test-vm-01)のままとなっています。

リストア後の画面(新規作成)

リストア元の仮想マシン(test-vm-01)も存在しています。

既存仮想マシン(Azure VM)の画面

リストア後の仮想マシン(restore-vm-01)のOSのホスト名を確認します。
実行コマンドのLinuxシェルスクリプト欄に"hostname"と入力します。
実行します。
リストア前のホスト名(test-vm-01)になっています。

※仮想マシン名とOSのホスト名が異なる状況なります。

仮想マシン(Azure VM)の実行コマンド画面

リストア後の仮想マシン(restore-vm-01)のプライベートDNSのレコード登録状況を確認します。
実行コマンドのLinuxシェルスクリプト欄に"nslookup test-vm-01″と入力します。
実行します。
Nameはリストア前のホスト名(test-vm-01)となっています。
IPアドレスにはリストア後の仮想マシン(restore-vm-01)のプライベートアドレスが表示されてます。

実行コマンドで"nslookup restore-vm-01″を実行して、プライベートDNSのレコード登録状況を確認します。
リストア後の仮想マシン名でのレコードは存在しない事が分かりました。

 

仮想マシン(Azure VM)の実行コマンド画面
仮想マシン(Azure VM)の実行コマンド画面

リストア後の仮想マシンはバックアップ設定がされていません。

リストア後のバックアップ設定状況

仮想マシンを削除してもバックアップデータは削除されない

バックアップ対象の仮想マシンを削除しても、Recovery Servicesコンテナーのバックアップデータは削除されません。
バックアップデータを使ってVMの復元やファイルの回復が出来ます。

※バックアップデータを削除しないと課金が継続するので注意が必要です。

仮想マシン削除後の確認

仮想マシンを削除した後もバックアップデータは残っています。VMの復元やファイルの復元が出来ます。

リストア後のバックアップデータ

既存の仮想マシンと置き換えてリストア

既存の仮想マシンと置き換えてのリストアはこちらで実施しています。
バックアップリストアを仮想マシンのメニューから実施してます。

バックアップジョブの監視はこちら。

仮想マシンデプロイ時のバックアップ有効化についてはこちらに纏めています。

Azureバックアップセンターについてはこちら。

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